#6 シルバーウィーク2024

試着・チャンピオンズリーグ・息継ぎ

日記回です。今年はその定義上シルバーウィークと呼ばないらしい。単なる三連休のお話。

9/21

前日、ZARAで発売されたHarry Lambert コレクションを何点か購入した。ハリー・ランバートは、歌手のハリー・スタイルズのスタイリストをしている人(どことなくややこしいですね)。しかし、かわいいのだけど、かわいいゆえに? 帰って着合わせを模索してみるとうまくはまらない。残念ではあるがさっそく新宿まで返品しにいくこととなった。ルミネを覗くと、カーハートは店員がほとんど中国系の方になってるらしく、女子スタッフふたりはライブ配信で本国向けに商品を紹介しまくっていた。あれはどういう経路で店舗の売上に繋がるのだろう? 伊勢丹メンズ館を上の階から眺め、Maison MIHARA YASUHIROのパッチワークデニムパンツと、sacaiのブルゾンを試着させてもらい心惹かれるが、たやすく手が出る価格ではなく……。

それから貸し会議室で行われたポケモンカードの練習会に参加させていただき、3時間くらい対戦したのち、トンカツ食って喝を入れて帰った。明日はチャンピオンズリーグがあるのだ。

9/22

チャンピオンズリーグとは、ポケモンカードゲームの大型大会だ。抽選に当たり出場が決まったその日から、平日は仕事を早めに切り上げて練習に向かうなど、可能な範囲で準備に取り組んできたが……。

午前をかけて3試合が終わった時点ですでに2敗。次負けたら強制ドロップだ。昼休憩時間になったので「源ちゃん」でネギトロ丼を食べた。しっかり英気を養う。煙草もしっかり摂取し、次の試合は何時頃に始まるんだろうと思いつつ、会場に戻った。大画面のエキシビジョン(写真)には4試合目に臨む選手が映し出されていた。あれ、もう始まってね?

昼休みだと思っていた時間は昼休みではなかったらしい。急ぎ、自分の席へ向かうと、そこだけぽっかり空いている。ジャッジに訊ねると、対戦者(私)が現れなかったことの処理は終えているという。不戦敗である。私の戦いはここで終わった。

出場定員5000人にも及ぶ大きな大会だが、先に述べたように抽選制で、落選してしまう人のほうがほとんどだ。そしてカードゲームというのは人生賭けてる人も少なからず存在するコンテンツである。どんな熱意があっても、実力を試すことのできる大会にそうそう出れるものではない。それをおしのけて出場することになった私が、わけのわからない理由でふいにしている。

しかし、この日のいちばん大きな失態はこのあとに判明する。

大会後に友人と約束をしていたため、幡ヶ谷まで向かう。喫茶店に入り、今日は間抜けだったよ〜とふいに鞄をひらくと、デッキがどこにもなかった。どこかで失くしたらしいが、国際展示場からの道程で鞄を開けたりした覚えもなかった。本当にびっくりした。決闘者の魂を? ネギトロ丼を食べてすっぽかしただけなら笑い話で済むかもしれないが、それは、さすがにどうなんだ? あまりにコトなので、家族を含めたまわりの人にはとても言い出せなかった。友人との会話もしばらく上の空になった。

なお後日、拾得物センターに問い合わせるとデッキは無事に見つかった。しかし、決闘者として大事な何かが欠落しているのではないかという思いは残った。

9/23

妻の買い物に付き合う。正午から夕方まで悩みに悩んでいたが、最終的にはいい決断ができたのではないかと思っている。

私も疲れたが、週1の水泳教室に通えそうなタイミングが今日しかなさそうだったためスクールへと向かった。今年7月、ニュースレターとDiscordサーバーを開設することのほかに、スイミングのレッスンを受け始めている。

物心ついたときから、とんと泳げなかった。高校の水泳テストをビート板で突破していたのは自分だけだった。とはいえいまさら泳げないことで特に困るものでもないが、人生においてできないことが当然となっている物事をできるようにしたら元気が出るだろうと思ったこと。そして何より今年の夏も苛烈に暑く、冷たい水は気晴らしになると考えたことがきっかけだった。

そしてかれこれ3ヶ月。一向にクロールの息継ぎがうまくいかず、今日もダメなら諦めてしまおうか……と、少し億劫な気持ちでプールに入る。水をかきながら、前回指摘された顎の引き方をふいに思い出すと……なんか息吸えた? もうひとかき、ふたかき、息継ぎ……できる! 3、4ターンも続けると疲れでフォームが崩れて溺れてしまうが、越えられない山をひとつ確実に越えた感じがする。唐突に。進歩とは不思議なものだ。

お知らせ(登壇2件)

・バレアリック飲食店でBGM係をやります

9/28(土)の夜です。豪徳寺~宮の坂にあるバレアリック飲食店(リンク先記事でお店の雰囲気が伝わると思います)にてBGM係を務めさせていただくことになりました。通常の営業中に選んできた曲をかけさせていただくというもので、イベントではなく、入場料とかは不要です。同じくBGM係として音楽評論家の柴崎祐二さん​、 ZINE 制作ユニット anóuta の若山さんが登場します。豪華すぎる! 楽しみすぎる! とはいえ主役はお食事です。ひとつオススメするとしたらメキシカンブリトー。気軽に遊びに来ていただければ。

・『東大ファッション論集中講義』平芳先生とトークイベントに出ます

10/1の19時より渋谷にあるFabCafe Tokyoにて『東大ファッション論集中講義』の刊行を記念して、著者の平芳裕子さんとお話しさせていただきます。詳細とチケットはこちら。今回は「ファッションスタディーズというこれまで新書では取り上げられなかった新しい分野を本にすることの舞台裏」がテーマとなります。文化まわりのトピックを何らかのメディアで発信したいと思っている方にとって有用な内容にできればいいなと思っています。


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#5 「LIFE 再現ライブ」と『人生後半の戦略書』

8/31 小沢健二の「LIFE 再現ライブ」を観に武道館へ。 地元に「バカウケ先輩」という人がいて、今は東北のほうで子育てをしているのだけど、昔、『LIFE』を繰り返し聴きすぎてCDが二つに割れたと言っていた。私は、iPod世代だからCDが割れてしまったことはないのだけど(というか「テープが擦り切れる」ならよく言うが、CDが割れたというのはバカウケ先輩の例しか知らない)、『LIFE』は人生における再生回数の五指には入ると思う。そもそもなぜ聴きはじめたかといえば入学する高校のウィキペディアを見たら卒業生一覧にいたから。「川崎ノーザンソウル」と彼が呼ぶ(『ルポ川崎』参照)あの街で生まれ育ったことの空虚さを自分の境遇に重ねていた。結婚しても「それはちょっと」が人生のテーマ曲だ。30年前から聴いてる先達には及ばないけれど、自分なりに思い入れを抱いているつもりということ。 再現ライブといっても前半は『LIFE』以外の曲から。出囃子は「流星ビバップ」のインストをバックに大合唱。私も歌詞をすべて覚えている。「天使たちのシーン」や「大人になれば」(この曲だけピアノに渋谷毅!)なども披露されて、あり

#4 『ひとり』というディスクガイド

『ひとり』というディスクガイドを薦めていただいて読んだ。読んだというかまずはひと通り眺めて、目についたレコードを探してみたりした。 本書は90年代におけるリスニング文化に大きな影響を残したとされる『モンド・ミュージック』の編著者、ガジェット4が1999年に刊行したディスクガイドの新装版として、四半世紀ぶりに送り出された。「クラブで踊るためでもなければ、ライヴハウスで騒ぐためでもない、ひとりの雰囲気を持つ音楽」が集められているが、いかにも静謐なフォークミュージックもあれば騒々しいオルタナティヴロックもあるし、ソロもあればバンドもあり、知る人ぞ知るレコードもあれば、ゴールドディスク級の有名作もある。だから、作品の雰囲気や知名度がまったく関係ないということもないけれど、どちらかといえば聴取する側の「ありかた」としての「ひとり」を問いなおすような一冊になっている。選盤の紹介文もバイオグラフィなどのデータ的なものではなく、個々の評者がどう感じているかに重心を置いているように見える。 カンパニー社の工藤遥さんによる解説に書かれていたが、現代は「みんなにとっては重要かもしれない再生回数だの影響力

#3 『STATUS AND CULTURE』出ました

『STATUS AND CULTURE』が発売されました。 これがどういう本か、ひとことではいわく言い難い。こうして一冊にまとめてなおも捉えきれていないんじゃないかという感触がある。のだけれど、自分の人生に深く関係があることはわかる。そういう本を担当できたことは編集者としてもひと区切りついた感があった。 とりあえずの説明としては、本書は「なぜ文化(カルチャー)は時間の変化とともに移り変わるのか」という謎に迫っている。トレンドは一部の過激な行動から始まり、反発を生むが、徐々に許容され、一般化する。このサイクルには「ステイタス」という、「社会における各個人の重要度を示す見えない指標」を追い求めるプロセスがある。 前著の『AMETORA』も含めた本書の背景、そしておおまかな議論について、カルチャーを知悉する先輩、動物豆知識botさんに執筆いただいた。見事な紹介になっているので、ぜひご一読いただきたい。 カルチャー愛好家のための新たな重要文献|単行本|動物豆知識bot|webちくま私たちのセンスやアイデンティティの起源から、流行の絶え間ないサイクルまで――〈文化という謎〉を解き明かすた

#2「2000年代Jポップ・ベスト・ソングス100」に載ってた・載らなかった何曲かについて思い出すこと

今月の『ミュージックマガジン』が「2000年代Jポップ・ベスト・ソングス100」という大変楽しそうな特集で、タワレコで見かけてさっそく購入した。ゼロ年代とは私にとっては10代をまるまる伴走したディケイドであり、純情な季節を相模原近郊の歴史をもたないニュータウンで過ごすことは、野蛮であり、愛であった。 思春期をゼロ年代に郊外で過ごしたことを、戦中派みたいに引きずり続けるんだろうな。 — 方便 (@ryohoben) March 28, 2020 表紙からてっきりキリンジのあの曲が1位なのだと早合点していたがそうではなかった。実際の1位は私も1位だと思う(万能初歩さんのレビューも素晴らしい)。あの曲はメロディのポリリズム(言っちゃった)もさることながら、サビの、メロディとは裏腹に下降しそうで下降しないベースラインがスリリングで感動的だと思うんですけど、どうですか? 自分が投票できる立場だったなら2位はTOKIO「AMBITIOUS JAPAN!」に入れただろうか。東海道新幹線品川駅の開業を記念したタイアップソングだが、愛知県で行われた愛・地球博との関係もあり長期のキャンペーンが展